Q1 快削鋼は削り易いが、サーメットや超硬工具では寿命が短く、また仕上面も良くない。対策を教えて欲しい。
A
快削鋼は削り易いイメージを与える材料名ですが、実際は被削性を良くする為、硫黄や鉛等の添加物が含まれています。この様な添加物を含有する被削材に対してサーメットは工具寿命が短くなります。又、超硬は元々溶着し易い性質を持っています。結局サーメットや超硬工具で快削鋼を削るとご質問のような不具合が発生し易いのです。
対策としては、PVDコーティングの工具が、快削鋼の添加物とも反応しにくく、溶着も発生しにくい為、快削鋼に適していると言えます。
Q2 旋削の切りくず処理改善にはどのような方法があるか教えて欲しい。
A
ブレーカ形状を変える、切削条件を変える等の方法が有ります。
下表に実際に切屑を比較したものを示しております。これを見てお分かりのように、送りを上げる、コーナーRを小さくする、切削速度を下げる、横切刃角を小さくすることも、切屑を細かく切るために有効な方法です。
Q3 SCM435の鍛造品(直径60mm、若干断続部あり)を加工している。取代も小さく送りもそれほど大きくない(切込み1.5mm、送り0.25mm/rev)が、コーティング工具でも欠けてしまう。なぜか?どうすれば良いか?
A
確かに送りも切込みも小さいようですが、鍛造品の黒皮部分が硬くなっていることや断続切削になっているため、切刃に微小チッピングが発生し易くなり欠損に至ると思われます。このような加工の場合、強靭性コーティングに換えるのと、ブレーカも切刃強度の強い高送り用チップブレーカに変えるほうが良いと思います。
Q4 アルミの旋削加工で、光沢のある仕上げ面にしたい。どうすれば良いか?
A
アルミの光沢面仕上げにするには、ダイヤモンド工具で加工して下さい。
ダイヤモンド工具でも、単結晶ダイヤと多結晶ダイヤがあります。使い分けとしては、鏡面仕上状態(ミラー面)を望むのであれば、単結晶ダイヤでの加工をお奨めします。
単結晶の場合と比べ、多結晶ダイヤの場合、刃先は細かな粒子の集まりであるため、微視的に見て刃先稜線の粒子のぎざぎざが仕上面に転写されますので、仕上面は虹色の光沢面になります。
Q5 チタンの旋削での加工条件を教えて欲しい。
A
チタンは著しく熱伝導性が悪い(鋼の1/5〜1/6程度)為、刃先と被削材の接触部に熱が集中し易い材料です。
切削速度を速くすると刃先の摩耗が非常に速くなりますし、乾式状態で高速加工(切削速度200m/min以上)を行うと、チタンの切リくずが発火する場合がありますので、切削速度は低めに設定する必要が有ります。
工具材質としては、K種の超硬かダイヤモンド工具となります。サーメットやコーティングチップは、すぐに摩耗してしまいます。
K種の超硬では、荒加工時は切削速度50m/min、ダイヤモンド工具での仕上加工は切削速度100m/min位が適当かと思われます。切込み・送りは鋼の荒加工や仕上げ加工と同様な条件で加工が可能です。なお、注意事項として、荒加工、仕上げ加工何れの場合も、必ず切削液はかけて下さい。切削液がかかっていないと異常摩耗が発生します。
Q6 切削工具のカタログで、ツールホルダの部分に「オフセットあり」「オフセットなし」の表示が書いてあるものがあるが、どう使い分けるのか?
A
自動盤のようにチャックぎりぎりまで刃物台が近づく機械では、『オフセットあり』を使用するとホルダの一部がチャックに干渉する場合が有ります。(ホルダの図面を参照下さい。)
この様な場合には、『オフセットなし』を使用すれば、干渉せずに上手にツーリングが出来ます。
Q7多刃設計(径160mm、12枚刃)のカッターで正面フライスを行ったが、びびりが発生する。何故か?
A
多刃設計のカッターは、テーブル送りを早く出来るメリットも有りますが、同時に何枚もの刃が食いつく為、切削抵抗が大きくなり、被削材が変形してビビリが発生する場合が有ります。その為、仕上面が悪くなったりすることがあります。
このような場合、チップを何枚か抜いて、同時食い付きを減らして行うと解消出来ます。
Q8 ステンレス等の難削材の旋削粗加工で工具寿命を向上させる方法があるか?
A
一つの方法としてテーパ切込みで加工してみて下さい。
例えば、切込み2mmの2パスで粗加工しているのであれば、
1パス目:最初は3mm、最後は1mmというテーパ切込み
2パス目:最初は1mm、最後は3mm(この場合、2パス目は刃先を真横に動かすだけで自然にテーパ切込みとなります)
このように、切込みを変化させて切削すると、刃先において負荷がかかる位置が順次変わるため、境界摩耗の発生が抑制されて工具寿命が長くなります。
Q9 樹脂やプラスチックを加工するポイントを教えて欲しい。
A
工具はダイヤモンド工具をお奨めします。切削速度は、200〜800m/minに設定します。尚、プラスチックは高速で加工すると、切削熱で軟化した切りくずが仕上面に貼り付いてしまうことが有りますので、注意が必要です。
K種の超硬でも可能ですが、切れ味を良くして溶着を防ぐために、出来る限りすくい角の大きいチップを使用して下さい。切削速度は200m/min以下に設定して下さい。
Q10 ステンレス鋼をフライス加工する場合のポイントを教えて欲しい。
A
ステンレス鋼は難削材であり、上手に加工するポイントは、
・切削抵抗を低く抑えること
・刃先に負担がかからないようにすること
・送りと切込みは低くし過ぎないこと
・ダウンカット主体の加工とすること
が上げられます。
そのため、具体的には、
・切削抵抗を抑える為にハイレーキカッター、ハイレーキチップを使用する。
・チップの刃先への負担を軽減するために、コーナー角の大きなカッターを使用する。
・加工硬化した部分を刃先が削らないように、送りは低くし過ぎずに0.1〜0.2mm/刃程度とする。
切込みも0.2mm以上にする。尚、切削速度は200m/min程度にすることを薦めます。
・ダウンカット主体の加工とするために、カッターの中心位置とワークの位置関係を確認して下さい。
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